東京都渋谷区、駅前の道路沿いという立地からもわかるように、この築合住宅「硝筐」は隙間なく建物が並んでいる場所に建てられている。土地を所有するオーナーは、不動産会社から提案された一部屋20㎡ほどのワンルームが並ぶプランに納得できず、建てるならば、いいものをと考えていたオーナーは、建築家の設計する建物に興味ををもつ人物だったのです。駒田氏は敷地面積が約77㎡と限られていることもあり、敷地いっぱいに建てることを選択しました。その際、問題になるのがボリュームのある階段室であったが、当初から建物の中心に階段室を配置することを考えていたという。 「細かく小さな部屋を並べるよりも、ワンフロアにワンルームとすることで、住居やワークスペースなど多様な使い方ができる場所だと思いました。階段室で限られたスペースを犠牲にするのは避けたかったこともあり、回廊状にすることで柔軟に使える空間になるのでは、という提案にオーナーの方も納得していただけました。結果的にそのほうが多様な住人が集まってくれるだろうと考えたのです。」
最初に提案したプランは、ほとんど変更されることなく最終的な形となりました。左右を建物に挟まれているため、採光や通風は遣路に面した前面と背面から採る必要があったことから、その両面の壁を半避明ガラスと外装を兼ねる波板ガラスの二重にした。透明ガラスにすると、周囲の視線が気になってしまうため、カーテンが閉めきられたままになりかねないのです。そうなると窓の意味がなくなってしまいます。周囲にどんな建物が将来的にできるのか予想しにくい場所でもあるため、視線をコントロールすることは必須でした。壁を一面の半透明ガラスとすることで、視線を遮りながらも内部と外部の中間に いるような、淡い光に満たされた空間とすることに成功した。
また、構造的にも中心の階段室と両側の壁で支える「独立耐震構造」にすることができました。薄肉ラーメン構造などに比べて壁を薄くすることができ、室内の空間を犠牲にすることを避けることができました。3階の部屋に暮らすYさんは、ここを生活の場としながら、同時に仕事場としても活用しています。部屋の中心にある階段室がプライベートの空間と仕事のスペースを自然に分けているため、同じ室内であってもオンタイムとオフタイムの切り替えがスムーズにできる。一般的なマンションなどの集合住宅をSOHOとして使う場合、プライベートの空間は人目を避けるように、光が入らないような小さな個室に追いやられてしまいがちです。ここでは前面と背面の壁両方が一面のガラスとなっているために、部屋のどこにいても光を感じることができます。
回廊のような間取りとガラスの壁面は、ともするとデザイン的なおもしろさを狙ったと思われかもしれないが、実際に生活している様子を見れば、限られたスペースをいかに効率よく活用しているのかを実感できる。一般的によく見られる1~2LDKの間取りのほうがコストが低く、結局は使いやすいという思いは間違いです。デザインも住み心地もいい空間であることは共通してます。それが建築家の設計した住まいといえます。